【殺人】「ドラッグセイムス大泉町店」前で知人を包丁で刺した男を逮捕【群馬県邑楽郡大泉町町東小泉】

公判で明かされた事件の発端は、昨年５月２３日にさかのぼる。勤務先の先輩２人に誘われ、被告は２人を車に乗せて館林市内の居酒屋に向かった。１時間ほど食事と共にビールや梅酒を飲んだ帰途、信号待ちで停車中に軽く追突された。被害者のはずが、相手の運転手に飲酒運転が知られてしまい、立場が逆転した。「金を払わなければ警察を呼ぶ」と言われ、示談金１５０万円を要求された。

　被告は「免許がなくなれば、トラックの仕事ができなくなる」と焦った。約３カ月前、幼いころから憧れた父親と同じトラック運転手になったばかりだった。

　金がなかった被告は相手の運転手に連れられて消費者金融で５０万円を借り、翌日には愛車を５０万円で手放して支払いに充てた。

　そんな被告に、旧知の男性は相談に乗るふりをして警察に行かないように説得していた。なぜか。被告が飲酒運転をするように仕向け、故意に事故に巻き込んで示談金として金銭をだまし取ろうと計画したのは、男性だった。相手の運転手も一緒に飲んだ先輩２人も、男性と共謀していた。

　おかしいと被告が気づいたのは、事件の１０日ほど前。残りの５０万円の支払いのため、バイクも売却しようと考えた。信頼する別の先輩に相談すると、「だまされているのではないか」と言われた。やがて被告は男性と、事故の相手の運転手がＳＮＳ上でつながっていることを発見。疑いが確信に変わり、激怒した。

　被告は事件の４日前、大泉署にも相談した。署が仲裁し、残りの５０万円は払わない約束になった。だがその後も男性らは、うその口実を作って被告に半額だけでも払うようにと迫った。

　そして事件の約４時間前、被告はホームセンターで牛刀を購入。男性に会うやいなや、隠し持っていた牛刀で追い、命を奪った。

　裁判員裁判では、殺意の有無が争われた。被害者参加制度で、男性の母親の言葉を弁護士が代読した。「（被告を）だましていたことが本当なら、母親として叱りたかったが、罪を償ってやり直す機会もない。人をいきなり刺す被告の考えは理解できない」。

本当の被害者は逮捕された小川さん。